Archive for the ‘本の紹介’ Category

“旅するブックシェルフ”の本

木曜日, 1月 16th, 2014

展示中のnakabanさんの”旅するブックシェルフ”から、本の紹介です。
いまさらですが・・・、あと少し展示中ですので、ご勘弁を。

「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
主人公の「僕」はイタリア人で、インドを失踪した友人を探している・・。
旅行記かと思えば、幻想と瞑想に充ちた世界へと誘われる。
インドという国の奥深さを、そこを浮遊するように体験させてくれる。

「終わりと始まり」 ヴィスワヴァ・シンボルスカ
詩というものがいまだによくわからない。
なのに、シンボルスカの言葉は水のようにするすると入ってくる。
と思っていると、さいごやっぱりわからなくなる。
でも、その言葉は確かに体に根を張ってしまう。

 

冬の本など

木曜日, 11月 21st, 2013

ずいぶんと本の紹介をしていないとご指摘をいただき・・。
どころか、ブログすらさぼっていました、すみません。

寒くなりました。
暖かい部屋で本を読むのがなんとも幸せだという声が聴こえはじめましたので、
冬の本など、いくつか。

「真穴みかん」 広川泰士

愛媛県八幡浜市、真穴というところで作られる真穴みかん。
みかんそのものと共にカメラがとらえるのは、日本の原風景。
収穫する手、道具、着古された衣服、
鈴なりのみかん、暮れていく入江、
どの写真も、ああこれを私は知っているという気持ちにさせられる。

熊本で生まれ育ったので、冬と言えばみかん。
ばあちゃんに、みかん食べるから持ってきてと言われて1個持っていくと、
”1個てあるかい、2、3個持ってこんかい”と怒られたことを思い出した。

「火を熾す」 ジャック・ロンドン

短篇小説の名手ジャック・ロンドンの200を超える短篇の中から、
翻訳の名手柴田さんが、選りすぐって翻訳した短編集。
表題作の「火を熾す」は極限の寒さの中で、
死へと追い込まれていく人間を描いた傑作。
極限の寒さを想像しながら、ストーブの前でぬくぬくと、これが楽しい。

「富士日記」 武田百合子


冬の本というか、冬になると読みたくなる。
夫・泰淳に「何も書くことがなかったら、その日に買ったものと天気だけでもいい」
と言われて綴られた富士山荘での日記。
日々の瑣末な出来事を追ううち、彼女と生活しているような心持になる。
愛犬ポコが死んでも、お腹はすく。買い物もする。
そして、その行間に彼女は泣く。何を見ても涙が出てくる。
「ポコ、早く土の中で腐っておしまい」素っ気なく書かれた一行に、
百合子さんの姿を見て、彼女に夢中になる。
百合子さんと一緒にいたくて、読み終わりたくないから、だらだらと頁を繰る。
毎年、お正月は「富士日記」を読んでごろごろ過ごしたいなあと思いながら、
果たせずにいる。

 

「冬の本」 夏葉社


まさに冬のための本で、84人の「冬」と「1冊の本」をめぐるエッセイ。
冬に読んだ本、冬になると思い出す本。まるで冬のような本。
この本を、冬に誰かに贈るのもいいかもしれない。
誰かの冬の本の記憶が、また別の誰かの冬の記憶とつながるかもしなれい。
拙文ながら、私も書かせて頂きました。
それはさておいて、いい本です。

写真集 『光と影』  川内倫子 

月曜日, 8月 27th, 2012

去年の春、写真家の友人が被災地へと行きました。
そのわりとすぐ後、会う機会があったのですが、
「目の前に白と黒の鳩が飛んできて、
がれきの中に舞い降りて、しばらくそこにいたんだ。」
と言っていました。
夢中でシャッターを切ったと。

かつてあった人の営みが
かけらとなって無情に散らばるがれきに降り立つ、
白い鳩と黒い鳩。
その象徴的な姿。
脚にはバンドが巻かれているので、
家か飼い主を探しているのでしょう。
彼らは意味を持たせる為ではなく、
ただそこに居るのだけれども、
やはり、私たちはその姿にこの世界を投影してしまう。

そして、その場に写真家である彼女が居合わせたから、
その姿を見ることができる。

彼女のまわりでは、そういうことがしばしば起こる気がする。
それもひとつの才能だと思うし、
もしかしたら逆で、
そこに居合わせる為に与えられた写真の才能かもしれないし。

そこで撮った写真が一冊の本になりました。
美しいです。
こういう場所を撮った写真が美しいということに
抵抗がある人もいるでしょう。
感じ方はもちろん人それぞれ。
私は美しいからこそ、胸を突かれる。
美しければ美しいほど、
そのがれきの下にあったものに馳せる想いが強くなる。

是非、多くの人に見てほしい本です。

 

『光と影』  川内倫子
価格  2625円
経費を引いた売上の金額は被災地の復興支援への寄付
となっています。

 

『木挽町月光夜咄』

木曜日, 7月 5th, 2012

吉田篤弘さんは、相方・浩美さんとともに、“クラフト・エヴィング商會”という名で、
本を作ったり装幀をしたりする。
個人名義で、小説も書く。
だから、その本の装幀はもちろんクラフト・エヴィング商會。

彼の小説や彼らの本では、そうかそうかと読んでいる最中に、
あれ?と違う場所へ連れて行かれることがある。

彼が書いた小説の中には、
架空の娘が書いたことになっているものも、ある。
彼女の名前は吉田音。
そして、彼の実際の曽祖父の名前は吉田音吉らしい。
この“木挽町月光夜咄”の中にそう書いてある。

著者初のエッセイ集とある。
でも、エッセイといえども、
すぐに道がそれる。

そうか、吉田さんとはこういう人か・・と思った途端、
こちらからあちらの世界へと移動している。
彼の小説世界と変わらない。

こうして書いていても、何が書きたかったのかわからなくなる。

とにかく読んでいて何度も心でつぶやいたのは、
この人は、ほんとに本が好きなのだなあということ。
読むのはもちろんのこと、物体としての本。

だから、この人の本に惹かれるのだ。
本好きとしては。