Archive for 6月 13th, 2012

『三池炭鉱「月の記憶」ーそして与論を出た人びと』

水曜日, 6月 13th, 2012

本の紹介です。

ku:nel最新号で気になる記事がありました。

 

「広島の地獄を生きた人間の一人として、私は終世、
人間そのものとしての地獄を生きるよりほかに
地獄から逃れる途はない」と、学歴詐称してまで
(中学を出ているとなれない)炭坑夫になった上野英信。
学徒兵として広島で被爆し、敗戦後に京大に復学するも
中退して炭坑夫となり、60年代には廃鉱集落に家族と移住して
「筑豊文庫」を創設し、見捨てられた炭鉱労働者の生きざまを記録し続けた。

その息子さんである上野朱さんを、書き手と画家の牧野伊三夫さんが
訪ねるという道行き。

これを読んで、気になっていたのに未読だった本に手がのびました。

 

『三池炭鉱「月の記憶」-そして与論を出た人びと』  井上佳子

囚人労働に始まる三池炭鉱。
そして連れて来られた中国人、朝鮮人、与論島の人びと・・。
過酷な労働と差別によって支えられた三井三池炭鉱108年の歴史と、
影の記憶、生き抜いた人々の強さを追い求めたノンフィクション。
「月が出たでた 月がでた あよいよい 三池炭鉱の上にでた。」
誰もが知っている(若い人は知らないかもしれないが)炭坑節。
著者はこの唄の
「あんまり煙突が高いので さぞやお月さん煙たかろ」という部分が
気になっていたという。煙に泣くお月さんとは誰なのか?
台風や飢饉に見舞われ、生き延びる為に島をでた与論の人びと、
強制労働させられる朝鮮・中国の人びと。
取材をすすめるうち、中国・韓国・与論の人たちが、みな、
今も月と密接なつながりを持っているということがわかってくる。

こんなに近くに住んでいながら、何も知らなかったと恥ずかしくなった。
本を読んでいるといつも、知らないことばかりだと気付く。
知っていると思っていることは、ほんの上っ面だけだなあと。
知ろうとしないことは罪だと思う。知らないから原発もほっておいたし。

彼らの記憶は、目をそむけたくなるようなことばかりだ。
ろくに食べるものも与えられず、暴行を受け、人として扱われない。
でも、人々は誇りを捨てなかった。
泣くことはあっても、笑うことも踊ることも忘れなかった。
誇り高く生き抜いた人たち。

多くの人に知ってほしい、月の記憶。

 

そして、この本を読んだお客さんに薦めて頂いた本。
『炭鉱(ヤマ)に生きる』
七歳から坑内に入り、以来五十余年、働くヤマが閉じられるまで
ヤマで生き抜いた山本作兵衛の画文集。

橙書店にはありませんが、
これを読んで更にお月さんの記憶、深まりました。